だいたい今の日本企業の現場は、コンプライアンス(法令順守)でがんじがらめになり、疲弊してしまっている。例えば、個人情報の漏洩を恐れるあま り、社外に仕事関係のデータを持ち出すことを社員に禁止している企業が多い。その一方で、終業時刻が来ると強制的に消灯して、社員を社内から追い立てる。 社員の不正防止のために、出張費などの支出も上司と部下の2人だけでなく複数の人間でチェックするなど、過剰な書類作成・承認の作業も増加する一方だ。こ うした状況で思う存分に働けといっても無理な話である。
日本の企業はどうしてここまで社員を信頼しなくなってしまったのか。関西の企業の経営者が最近こんな話をしていた。米国に出張してアップルを訪問 した時に、同社では社員が会社のパソコンを持ち帰っていることを知った。「個人情報の漏洩などの問題はないのか」と聞くと、「我々は日本企業の真似をし て、社員を信頼しているだけだ。あなた方は社員を信頼しなくなったのか」と聞き返されたという。
日本企業は根本的なところでボタンの掛け違いをしてしまっている。私にはそう思えてならない。コーポレートガバナンス(企業統治)にしてもそうだ。形式的な合理性ばかりを求めて、かえっておかしなことになっている。